2011年7月 全建労東北地本
 
東日本大震災からの復旧・復興に向けた「10の提言」
《被災者に仕事を!安全・安心な仕事とくらしを!》
はじめに
● 2011年3月11日、東北地方の太平洋沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生し、この地震による津波が東北地方から関東地方の沿岸部を広範囲に襲い、家屋をはじめ多くの構造物や施設が倒壊し、道路・鉄道・地下鉄などの公共交通機関が寸断され、水道管・ガス管・下水道管の破壊と送電鉄塔や電柱の倒壊、変電施設が被災し、東北地方で断水・停電・通話障害などが発生している。
  津波の被害も広範囲に及び、多くの尊い人命が犠牲となり、住居、工場・事務所、道路・港湾などのインフラ、農地、漁場などに対し壊滅的な被害を与え、さらに職場と仕事も奪われている。
● さらには、炉心冷却用の電源を失った東京電力福島第一発電所の1号機から3号機で核燃料が溶解し、相次いで爆発が起き、4号機では使用済み核燃料の崩壊熱による爆発と火災が3月15日に発生している。これらの事故で、大量の放射性物質が空中にまき散らされるとともに、原子炉が損傷し、放射性物質を含む汚染水が、地下と海に漏れ続けるという人類史上はじめての脅威がいまなお続いている。
● 地震発生から100日以上経過しても、被災された方々の生活再建の見通しが立たない状況に、政争と保身に終始している政府に対して被災者を中心に怒りが沸き起こっている。
 こうした中でも、各省庁や自治体は復興に向け、ガレキ処理や排水、公共施設・構造物の復旧工事を行っている。今後本格化する復旧・復興事業に関し、地域住民と工事に携わる労働者の暮らしと命を守ることは、私たちの使命である。
 
1.地域復興のため、被災者に仕事を!
【提言1
 工場や事務所、港や田畑が被災し、職場と仕事を失った多くの被災者を、復興工事・業務委託等に優先的して雇用する。
 
2.地域の真の復興のため、復興事業をはじめ公共事業ではたらく労働者 に、公正な賃金・労働条件と業者の適正な収入・仕事を確保する。
【提言2
  「復旧・復興はボランティアだ」「仕事がないよりはいいだろう」などとして、官製ワーキングプアを大量に発生させる安い賃金での就労を防ぎ、真の復興のために、公契約法(公共事業における賃金等確保法)を制定するなど法体系を整備し、下請及び資材業者と労働者に対し適正な単価と賃金・労働条件が確保される仕組みを作る。
【提言3
 良質な資産を後世にのこすため叩きあいによる構造物の品質の低下を防ぎ、労働者の労働条件を確保するため、最低制限価格を設定するなど公共工事・業務委託でダンピング受注を防止する有効な仕組みを作る。
【提言4 】
 復旧・復興と不況対策を早急に実施し、地域業として建設産業の再生を図るため、中小建設・建設関連業が優先的に受注できる施策を策定し、建設産業の再生を図り、各省庁、地方自治体等の発注機関に官公需法を徹底させる。
 
3.復興事業をはじめ公共事業ではたらく労働者と、周辺住民の健康と安 全を守る
【提言5 】
 地域住民と被災地で働く労働者などに対し、工場や家屋・施設で使用されていたアスベストの被害を防ぐため、「石綿障害予防規則」「労働安全衛生法」「大気汚染防止法」などの関連法規の徹底をはかり健康被害を防ぎ、各種の有毒物質から労働者と地域住民の健康を守る対策を早急に確立する。
 また、復旧・復興工事にかかわる労働者と影響を受ける住民の安全のため、放射能被爆を防ぐための対策と観測体制や情報公開を国が一元的に行うシステムを早急に確立する。
 
4.復興事業をはじめ公共事業を執行・監督するために
【提言6 】
 復旧・復興工事の監督・検査については、施設や構造物の良好な品質を確保するため、事業の執行にあたっては、国と自治体が責任をもって行うことが必要である。そのため公共事業発注官公庁等の体制を強化し、必要な職員を確保する。また、必要な職員の増員は、地域住民を優先して採用する。
【提言7 】
  国の責任を放棄し、国民の安全・安心を切り捨て、十分な財源の確保を伴わない「地方分権」や「道州制」は行わない。
 
5.復興計画について
【提言8 】
  一層の環境破壊を防止するため、乱開発を規制する法体系の整備や、情報公開及び住民要望や住民参加による計画・事業決定のシステムを確立する。
 
6.復興財源について
【提言9 】
  復興財源については、国民・被災地域の疲弊をますます加速させる増税や賃金カットを行わず、特別会計や外貨準備の一部を売却し、復興予算にあてる。
 
7.これからの日本のために
【提言10 】
  生活関連の公共事業を推進する。